いずこも同じ

送迎バスでの子どもの置き去り

3月になりました。メルボルンは日本とは季節が逆なので、日本で言うところの9月に入ったという感じでしょうか。日本の9月といえば残暑ですが、こちらは朝晩は涼しく、時に寒く、昼間も20度を少し超えるくらいの陽気です。ただ、お日さまの下ではじりじりと焼けるような暑さを感じます。そのため、車の中は要注意です。

今朝のABC Breakfastで、今日3月1日から子どもの送迎に関するあらたな規則が運用されると報じていました。日本でも送迎バスなどの中に放置され、幼い子どもたちが命を落とすという痛ましい事件が何度となく繰り返されていますが、こちらでも事情は同じのようです。そのため、オーストラリア政府は、子どもの送迎にあたり、サービス提供者は、(1)子どもたちの乗り降りをきちんと観察すること、(2)車内に子どもたちが残っていないことを確認すること、(3)これらをきちんと記録に残すことなどを法律で義務化しました。次の記事は、サウスオーストラリア州のウェブサイトに掲載されたものです。

www.esb.sa.gov.au

日本では、厚生労働省から「こどもの出欠状況に関する情報の確認、バス送迎に当たっての安全管理等の徹底について」という文書が昨年2022年11月14日に事務連絡として通知されていますが、その実行は関係者に委ねられている状況です。置き去り防止装置の設置なども話題にのぼっていますが、それを運用するのも担当者です。事故を防ぐ実効性のある措置を期待せずにはいられません。

公的施設における人のあつかい

日本とオーストラリアで類似の事件ということで、もう1つ記録しておきます。

スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが収容されていた名古屋の入管施設で亡くなった事件は裁判がつづいており、みなさんの記憶にも新しいと思います。なぜ体調を崩したサンダマリさんに適切な治療を行えなかったのか、今なお疑問がつきません。

ここビクトリア州でも同様の事件が2020年1月に起こっていたと、1月末に報道されました。

www.abc.net.au

亡くなったのは、ヴェロニカ・ネルソンさんで、ファーストネーションズの方でした。サンダマリさん同様、公的施設(ネルソンさんは刑務所)に拘留中に、体調を崩したものの、適切な治療が施されずに命を落としてしまったという事件です。報道された当日は、私の自宅近くにあるビクトリア州検死法廷(Coroners Court of Victoria)前でデモも行われました。当日、ここを通りかかったところ、彼女へのメッセージが掲げられていました。

ベロニカさんへのメッセージ

公的な権力は、一歩間違えると人の命にも関わります。自らの持つ力を自覚し、人びとに対し精一杯心配りすることが大切です。もちろん、このことは公的権力であるかどうかに関わらず、私たち市民、一人ひとりにもあてはまるでしょう。今回、2つのできごとをつうじて、あらためて心に留めたいと思います。

 

Anniversary、アニバーサリー、記念日

早いもので2月も今日で終わりです。明日から3月。私のメルボルン生活もあと1ヶ月となります。

洪水から1年

今日2月28日は、ニューサウスウェールズ州北部の町Lismoreで洪水が発生してから1年です。ABC BreakfastではLismoreから中継があり、現在の街のようす、ビジネスを再開した人もいればそうでない人がいること、政府は金銭面を含め、支援を続けていくことなどが紹介されました。abc.ne.auでは当時の進捗状況をウェブサイトにまとめています。

www.abc.net.au

また、Sydney Morning Heraldは、昨年6月30日に洪水被害の広がりのようすを紹介していました。

www.smh.com.au

さらに、人びとの記憶を記録に残すべく、Flood Diariesというウェブサイトを立ち上げた方々もいます。

flooddiaries.com

Lismoreが川の交差するところであり、その上流で大雨がつづいたことから、水深が最大14.4mにまで達し、大きな被害をもたらしたようです。以前にも記しましたが、日本で洪水というと、激しい川の流れや堤防の決壊が想像されます。一方、こちらの報道で見る洪水は、そうしたものも一部にはありますが、どちらかというとじわじわと水面が上昇し、染み広がり、陸地であったところが水に沈むというイメージです。以前、メルボルンの中心を流れるヤラ川の上流に行きましたが、川幅が細く、まわりに牧草地、あるいは草原が広がっていました。こうした場所でも川の水量が増し、牧草地や草原にあふれ、沼や池のようになったとガイドの方から伺ったことがあります。

日本であれば、ダムや護岸工事などの治水工事が真っ先に行われそうですが、オーストラリアではコンクリートで岸辺を固めるような治水はあまり見かけません。どちらがよいかの結論はここでは得られませんが、その土地ならではの考えがあってのことであると理解しています。現在も被害に会われている方にお見舞い申し上げるとともに、被害に会われた方の一刻も早い復興とご健康を祈念します。

ウクライナ侵攻から1年

少し遅くなりましたが、2月24日でロシアがウクライナに侵攻してから1年となりました。今なお、いや一時よりも激しく、ウクライナ国内の住居や民間施設で被害が出、毎日少なくない市民の方に死傷者が出ています。

報道を見聞きして思うのは、外交への言及です。報道では各国からウクライナへの武器供与が取り上げられることが多いのですが、いかにして戦闘なしで、外交努力で戦争を終結させられるかが重要であると、私は考えます。国連総会や国連安保理でのようすは紹介されますが、そうした外交努力が行われているのか、行われていないとすればなにが課題なのかなど、こちらの側面からのようすも知りたいと思っています。他の方から見れば、甘い考えかもしれませんが、平和的な手段でこの戦争が一刻も早く終わることを願ってやみません。

さて、24日には、世界各地でウクライナへのエールが送られました。ここメルボルンでは、Flinders Street Stationがウクライナ国旗の青と黄色でライトアップされました。

www.dailymail.co.uk

あらためて、世界各国が、世界の人びとが連帯して、戦争のない世の中を迎えられたらと思います。

東日本大震災から12年

今度は少し早いですが、3月11日で東日本大震災から12年となります。1つ目の話題である洪水被害のように、時が流れ、街の復興が進むと、人びとからこの大災害の記憶が次第に薄れていきます。ただ、今なお現在進行形なのが福島第一原発事故の処理です。

先日、ABC Breakfastで、冷却に用いられ処理された汚染水の海洋放出が近々行われると紹介されました。2月26日の朝日新聞でも、このことが取り上げられていました。

www.asahi.com(有料記事)

海洋放出に関して、各国からの関心も高く、BBCの日本語サイトやThe Guardianなどでも報じられています。

www.bbc.com

www.theguardian.com

2月22日には、原子力規制委員会東京電力が提出した処理水放出計画の審査書案を了承したとも報じられています。

news.yahoo.co.jp

汚染処理水が積み重なり、それを保管する敷地に余裕がなくなる中、政府は決定した方針にしたがい、このように手続きを進めるのは当然のことなのかもしれません。ただ、そうであるからこそ、関係者への心配りがなおいっそう必要です。

海で繋がるアジア太平洋諸国も日本にとって重要な関係者です。2月7日、太平洋諸島フォーラムPacific Islands ForumPIF)の代表団が日本を訪問し、岸田文雄総理大臣や西村康稔経済産業大臣と会談しました。このとき、汚染処理水の海洋放出についても話題になりました。

www.mofa.go.jp

www.meti.go.jp

この訪問の内容は、笹川平和財団のウェブサイトに紹介されています。

www.spf.org

上にリンクを紹介したウェブサイトは、Googleでニュース検索した結果、見つけられたものです。残念ながら、その検索結果に日本のメディアが報じたニュースはあまりありませんでした。海外メディアの日本語サイトがヒットしたり、英語で検索すると海外のウェブサイトがヒットし、相応の情報に触れられます。

www.yomiuri.co.jp

海洋放出自体は「国内」のできごととして知る機会が多いでしょう。他方、それが海外の人びとはどう捉えているのか、どのような危惧を抱き、どのような要望を持っているのかなどを知る機会は、上述したとおり、残念ながら多くありません。より多角的にものごとを捉えられるような報道を期待したいと考えました。

 

 

 

Maurie Plant Meet Melbourne

昨晩、仕事の帰りにアルバートパーク(Albert Park)にあるLakeside Studiumで行われた陸上競技大会Maurie Plant Meet Melbourne - World Athletics Continental Tour Gold Meetを観戦してきました。World Athletics(世界陸連などと呼ばれている)のWorld Athletics Continental Tourの1つに数えられています。

この大会を知ったのは、今週月曜日に放送されたABCのBreakfastでした。ゲストとして、東京オリンピック100m銀メダリストのフレッド・カーリー(Fred Kerley)選手が出演し、この大会に出場することを知りました。そして、よくよく確認してみると、日本からも多くの選手が出場することがわかりました。列挙します。

世界クロスカントリー選手権大会が2月18日(土)にオーストラリアで行われることは知っていたのですが、その場所がお隣ニューサウスウェールズ州のバサースト(Bathurst)ということで、さすがに観戦は断念しました(苦笑)。その流れもあってでしょう、田中希実選手、川口選手、吉村選手、澤田選手、そして長谷川選手がこの大会にエントリーしていました。ラッキーでした。

なお、この大会を紹介するページのイメージ画像には、田中希実選手が真ん中にいます!

www.athletics.com.au

いつものようにTicketekというアプリ(ウェブサイト)を使って、30ドルでチケットを購入しました。陸上競技のすべての種目を観戦できるわけではありませんが、世界のトップ選手を間近に、しかもコンパクトなスケジュールで見られ、お得感があります。

競技は、女子ハンマー投げから始まりました。トラックは地元の高校生による女子4*100mリレー、男子4*400mリレーが組み込まれるなど、Internationalの大会でありながら、地元とのつながりがあり、子どもたちがトップアスリートを身近に感じられるよい取り組みだなと思いました。

日本選手では、3000mで田中希実選手が、走り高跳びで高橋選手が、やり投げで長選手がそれぞれ3位となりましたが、今回私が注目したのは、100mハードルの田中佑美選手です。結果は2着でフィニッシュ。タイムは13秒24で、自己ベストの13秒12まで0秒12という好タイムでした。ハードリングもスムーズで、とても良いレースでした(偉そうでごめんなさい)。走り高跳びの高橋選手も自己ベストの1m84cmまであと一歩の、1m80cmでした。ただ、今回フィニッシュライン近くで観戦していたため、走り高跳びのようすは遠くではっきりとは見えませんでした。惜しかった!

女子3000mのレースのようす

ブログの本文で、World Athleticsのウェブサイトに掲載されている個人の記録を参照しています。そこには、世界ランク(World rankings)、自己記録(Personal Bests)、シーズン記録(Seasons Bests)、競技結果(Results)、これまでの歩み(Progresion)、表彰(Honours)が示されています。田中選手の競技結果を見ると、

と転戦しています。他の選手も今年に入ってからすでに複数の大会に参加している人が少なくありません。日本ではトラック競技のシーズンはまだ始まっていませんが、こうやって一年を通して大会に出ながら、実力を高めているんだなぁと関心しました。テニス選手にも同じことを感じました。もちろん、その間の練習は欠かせないでしょう。大会の結果からだけでは実感できない、選手のみなさんの現実を目の当たりにした大会でした。

追記 入場前に、競技場に隣接するウォームアップエリアを通ったところ、田中佑美選手がストレッチをしていました。また、その少し後に、田中希実選手がエリアに入っていくところも見かけました。競技前だったので、声をかけることはできませんでしたが、こうやって選手を身近に感じられるのっていいですね。

セントキルダ図書館(St Kilda Public Library)

今日は久しぶりに30度を超え、真夏日になりました。先週は水、木、金と熱波が襲い、金曜日はなんと41度にまでなりました。その後は比較的過ごしやすい陽気がつづき、昨日は一転、寒々とした天候でしたので、また夏が戻った感じです。とは言え、朝晩は涼しいか、寒いくらいの気温にまで下がるので、秋の気配も感じられます。

この暑さの中、出歩くのはどうかとは思いましたが、今日はセントキルダ図書館を訪れました。セントキルダはメルボルン市の南に位置するポートフィリップ市(City of Port Phillip)にあり、ビーチやペンギン、ルナパークなどで有名です。

ポートフィリップ市には、セントキルダ図書館のほか、アルバートパーク図書館、エメラルドヒル図書館、ミドルパーク図書館、ポートメルボルン図書館があります。これまで、ミドルパーク図書館とセントキルダ図書館を訪れたことがなかったので、この2つの図書館に行こうと思ったのですが、ミドルパーク図書館の開館時間が14時から18時であったこともあり、セントキルダ図書館のみにしました。

library.portphillip.vic.gov.au

セントキルダ図書館の開館は1973年と比較的新しく、その後1990年代に増築が行われ、現在の図書館になっています。図書館自体は、1860年代の住民からの声を受けて市庁舎に設けられた図書室が始まりであると英語版Wikipediaで説明されています。ただ、現在の図書館開館までには紆余曲折があったようで、そのことを伝える当時の新聞記事の切り抜きや開館時の建築図面などが図書館内に展示されていました。Wikipediaの記事でも紹介されていますが、自分なりに詳細を調べてみたいですね。

en.wikipedia.org

その図書館の書架の一角に、“Obu Collection (Japanese)”なる案内表示を見つけました。その書棚を見ると10棚ほどの日本語図書が排架されて(並べられて)います。気になって眺めていたところ、ライブラリアンが声をかけてくれました。このコーナーの謂れを尋ねてみたところ、姉妹都市であるObu市の図書館と資料を交換し、ここに設置したとのことでした。「日本の真ん中あたりにあるようです。」と教えてくれました。

しかし、私にはObuがどこの市なのか、まったくぴんと来ませんでした。Obu、おぶ、オブ...。帰宅してから調べたところ、愛知県大府市でした! Ōbuか! ローマ字表記は難しいですね(笑)。Oobuなら分かったかもしれません。

そのコレクションの中に、見知った女性の絵が表紙にあしらわれた本がありました。メーテルです。『松本零士画集』という本でした。先日、松本零士さんの訃報が届きましたね。そのことをライブラリアンに伝えると、「私の娘は日本語が少しできます。日本のアニメも好きなので知っているかもしれませんね。」と教えてくれました。ご自身もご家族のお仕事の都合で、日本を行ったり来たりしている(いた?)ようです。

いろいろな偶然が重なりましたがが、ここメルボルンで、このタイミングで松本零士さんの本に出会うとは思っていませんでした。ご冥福をお祈りします。

 

 

 

オーストラリアの住宅事情

毎度のことですが、今朝のABC Breakfastを視聴していたところ、メルボルン郊外の街カルカロ(Kalkallo)の交通渋滞について紹介されていました。このことは、すでにChannel 9のウェブサイトで1年ほど前に報じられていました。

9now.nine.com.au

この記事によると、カルカロには6,000人が住んでいる(計画では3万人になる)にもかかわらず、街の出入り口が1箇所しかなく、車で1kmを進むのに1時間もかかるのだそうです。今朝のニュースでもそのようすが放映されていました。

これにはいろいろな要因があるのでしょう。例えば、私が最初に気になったのは、放送でもちらほらと映っていたラウンドアバウトです。信号機のない交差点であるラウンドアバウトは、右方向からの車が優先されます。そこが幹線道路の場合、車がひっきりなしに通過するため、側道から入るのが難しくなります。朝の通勤時間に、幹線道路へ出るところが1箇所しかなく、さらにそこがラウンドアバウトですと、滞るのは当然ではないかという推測です(当たっていないかもしれません...)。

また、住宅価格の高騰も考えられます。私がメルボルンに来てから、たびたび耳にするのがこの問題です。メルボルンでは人口の増加に伴い、郊外に住宅地が拡大しています。比較的遠くまでメトロが走っているので、メルボルンのCBDに通勤するとしても、最寄りの駅まで車で行ければ、比較的容易に通勤できると思います。とはいえ、住宅需要が高ければ、その価格も当然上がっていきます。また、需要に比べ、住宅の供給も小さいことも影響しているようです。友人の話では、ここ最近、その価格上昇のスピードが高まっているとのことです。

ニュースでは、公共交通機関の不足にも触れられていました。新しく開発された郊外の住宅地は、公共交通機関の駅やバス停から遠かったり、電車やバス自体が運行されていなかったりします。そのため、最寄りの駅やバス停までは必然、車での送迎が必要になります。

先の住宅価格に関連して、賃料の高騰も問題になっています。アジア経済ニュース(NNA)の記事「【オーストラリア】豪主要都市の住宅賃料、提示価格が2.4%上昇」(2023年2月16日)がYahoo! Japanのニュースに掲載されていました。

news.yahoo.co.jp

最近では、新型コロナウイルスが落ち着き、海外の学生(いわゆる留学生)がオーストラリアに戻り始めているのですが、大きな問題の1つに住宅の確保があります。住宅賃料の高騰は、物価高と同様、海外からの学生(とその家族)の頭痛の種となっているようです。

もちろん、賃貸住宅を求めているのは、大学生だけではありません。賃料の高騰に伴い、シェアハウスを求める人が増えているのですが、そのシェアハウスですら見つけるのが一苦労であるという記事もあります。

www.abc.net.au

 

ところで、オーストラリアで賃貸物件を探すとき、ほぼ必須なのが内覧(inspection)への参加です。不動産会社はウェブサイトに物件の概要と内覧日を掲載します。関心のある人は、事前に内覧を申し込み、内覧日に物件を訪れ、気に入ったら賃貸の希望を申し出ます。最近は、この内覧に参加する人がとても多くなっている、つまり競争が激しくなっており、無事契約までたどりつくのが至難の業となっているようです。そうしたツイートをよく見かけます。

私も同様に、希望する複数の物件の内覧を申し込んで、物件を探しました。そのうちの1つに申し込んだところ、半年の賃貸は行っていないが、同じマンションに別の物件があるのでそちらはどうかと提案され、ウェブサイトに広告が出る前に契約できました。特殊な例であるかどうかはわかりませんが、ある意味、賃貸物件難民にならずラッキーでした。

一方、住宅購入の場合、オークションが行われます。希望する人が内覧を経て、希望する価格で入札するのです。オークション前に希望入札価格以上を提示して契約するという裏技もあるようですが、割高になることは否めません。

ここまで記した内容は、あくまで私個人が半年ほど、メルボルンで生活して見聞きしたことです。これら以外にも、さまざまな事情が重なって、冒頭の交通渋滞を引き起こしているのではないかと推測しました。住心地の良い街と評判のメルボルンの別の側面を考えさせるニュースでした。

最後に、ここまでのまとめとなるような2023年2月11日付けの記事“Race for space: Melbourne's ‘hellish’ housing Hanger Games”を1本紹介しておきます。

www.theage.com.au

 

 

オーストラリアでのスポーツへの関心

サッカー(Football)

2022年はFIFAワールドカップカタール大会が開催されました。このブログでも取り上げましたが、ここメルボルンでもパブリックビューイングが行われ、Socceroosを応援する人びとの姿を目にしました。

そして今年、2023年はFIFA女子ワールドカップFIFA Women's World Cup)がオーストラリア、ニュージランドで共同開催されます。日本代表なでしこJapanの試合は主にニュージーランドのスタジアムで行われます。現地で応援したいのは山々なのですが、開催時期が7月下旬からなので、仕事が...。

開催国として出場するオーストラリア女子代表は現在、ニューサウスウェールズ州ゴスフォード(Gosford)、シドニー(Sydney)、ニューキャッスル(Newcastle)で行われているCup of Nationsに参加しています。大会は2月16日から22日まで、チェコ、スペイン、ジャマイカ、そしてオーストラリアの4カ国総当り戦で行われています。今朝のニュースでは、オーストラリア代表がスペイン代表に3-2で勝利したことが報じられていました。

www.sportingnews.com

そこで、私は初めて知りました。オーストラリア女子代表がMatildasと呼ばれていることを。男子チームはSocceroos(サッカルーズ)、女子チームはMatildas(マチルダス)。

少し気になったので、Googleで検索してみました。そうしたら、日本語Wikipediaにもきちんと紹介されています。その呼称の由来は、「オーストラリアを代表する歌とされるワルチング・マチルダに因む。」とありました。

ja.wikipedia.org

さらに、最近話題のChatGPTで「なぜオーストラリア女子代表をマチルダスと呼ぶのですか。」と尋ねてみたところ、次のような回答が返ってきました。

「マチルダ(Matildas)」という愛称は、オーストラリア女子サッカー代表チームが最初に国際試合に参加した際に、チームが訪れた地元のクラブチームが贈ったものです。

このクラブチームは、オーストラリアのブリスベンにある「ストラスブール・マチルダFC(Strasbourg Matildas FC)」でした。オーストラリア女子代表が初めてブリスベンを訪れた際に、ストラスブール・マチルダFCのメンバーが歓迎の意味を込めて、代表チームに「マチルダ」という愛称を贈ったのです。

「マチルダ(Matilda)」は、オーストラリア英語で女性の名前としてよく使われる名前で、またオーストラリアの歴史において、イギリスから移民した女性たちが、荷物や家具を運ぶ際に頻繁に使われた荷車の名称でもあります。この荷車は、特に困難な状況下でも耐久性があり、オーストラリアの開拓時代において、女性たちの力強さや不屈の精神を象徴するものとされました。

このように、「マチルダス(Matildas)」という愛称は、オーストラリア女子代表チームが、女性たちの強さや不屈の精神を表現すると同時に、オーストラリアの歴史や文化にも根ざしたものとなっています。

Wikipediaとはまったく異なる説明でした。これが本当なのかどうか、その根拠をさらに確かめる必要はありますが、とても興味深い内容ですね。

 

オーストラリアンフットボール(Australian Football)

もう1つ、今朝のニュースで興味深かったことがありました。いつもどおり、ABCのBreakfastを見ていたところ、8時のトップニュースで、オーストラリアンフットボールのジャック・ギニバン(Jack Ginnivan)選手(Collingwood)が薬物使用発覚後、初めてテレビの前で謝罪したことが報じられました。

The Western Australiaのウェブサイトに掲載された記事によると、1月のトレーニングキャンプ中に、トイレで薬物を使用しているところをビデオで撮影され、それが流出し、事件が発覚したとのことです。公式戦2試合の出場停止と罰金5,000ドルが課されるようです。

thewest.com.au

ギニバン選手は、Collingwoodのスター選手のようです。が、オーストラリアンフットボールに疎い私には誰のことか、まったくわかりません(失礼な発言をごめんなさい)。ただ、ここオーストラリアでは、トップニュースになるほどの重要な事件なのだろう、そしていかにオーストラリアンフットボールが人びとの間で特別な存在であることを想像しました。

オーストラリアンフットボールのプロリーグAFL(Australian Football League)の2023年シーズンは、3月16日(木)にRichmondとCarltonの試合で始まります。場所はMCG Melbourne、メルボルンの巨大なクリケット場です。翌17日には同じくMCGでGeelong Catsと話題に上ったCollingwoodの試合が、さらに18日(土)にはサザンクロス駅の隣にあるMarvel StadiumでNorth MelbourneとWest Coast Eaglesの試合がそれぞれ行われます。帰国前にどれか1つでも観戦したいですね。

 

 

 

デジタルオンリーライブラリ(Digital-only Library)またはオールデジタルライブラリ(All-digital Library)

バーモント州カレッジシステム(Vermont State Colleges System、VSCS)が2月7日に発表したプレスリリース“Announcing Changes to Vermont State University Athletics and Libraries”が波紋を広げています。

VSCSは、入学者数の減少や財政状況の悪化などから、Northern Vermont University、 Castleton University、Vermont Technical Collegeの3つの大学を統合し、2023年7月1日にVermont State Universityを設立する予定です。その際、既存の物理的な図書館は廃止し、図書館資料はすべて電子で提供すると先のプレスリリースで発表しました。

これに対して、2月10日に開かれた説明会(forum)で学生やコミュニティの住民から驚きや怒りの声が上がり、大学当局が謝罪したことがメディアで報じられたのです。ただし、当局はこの方針を撤回する予定はないようです。

www.vnews.com

bookriot.com

記事では、学生や住民からは、場所としての図書館がなくなることへの不満、すべてがオンラインに移行していく中で資料までもがオンラインで提供されることへの使い勝手への懸念や健康への不安、障害を持つ人の中にはデジタル資料を利用できない人もいることへの問題提起など、さまざまな課題が紹介されていました。

他方、先のプレスリリースでは、オールデジタルへ移行するメリットを次のように挙げています。

  • Access to professional research librarians via 24/7 chat coverage.(24時間365日、プロフェッショナルライブラリアンがチャットで対応します)
  • Credentialed librarians will be available in-person at all Vermont State campuses.(すべてのバーモント州立大学のキャンパスで、有資格のライブラリアンに対面で相談できます)
  • Unlimited user access to resources.(図書館資料を無制限で利用できます)
  • Access to paid resources such as databases, scholarly articles, and articles behind paywalls.(データベース、学術雑誌論文、有料論文などの有料学術情報資源を利用できます)
  • Access to more information. Digital libraries can store significantly more information than physical libraries, which are limited by storage space.(より多くの情報を利用できます。デジタルライブラリは保管スペースに限りのある物理的な図書館よりもはるかに多くの情報を保存できます)
  • More places for students to gather to study, use computers and printers, and access class materials.(学生が学習のために集まったり、PCやプリンタを利用したり、授業教材を利用するための場所をより多く提供します)
  • Special collections, on-reserve resources, and interlibrary loans will still be available.(特殊コレクション(筆者注:貴重書やその大学独自の資料群)、指定図書、図書館間相互貸借(ILL)は今後も利用できます)

これまで当たり前のように存在していた図書館(建物、学習空間、図書館資料、ライブラリアン)が突然、デジタルに移行すると聞かされて困惑しない学生は少なくないでしょう。一方で、上述のメリットを見る限り、またプレスリリースに付されたLibrary FAQを読む限り、大学当局が考えもなしに一方的に事を進めているとも思えません。例えば、既存の図書館(建物)は次のように扱うとFAQで説明されています。

We understand the important role libraries play in the fabric of Vermont life as well as within our campus communities. We want to re-imagine the use of the library spaces to provide resources such as community commons, enhanced study spaces, student services, and access to other innovations and tools. We will engage with our campuses and larger communities to re-imagine the spaces. 

As of July 1, 2023, these spaces will no longer provide services including circulation and physical materials (these materials will be available digitally). Interlibrary loans will still exist, but with a shift to e-books and digital articles and other materials. 

We plan to launch a request-for-proposal process to engage architectural resources for this purpose. In the short term, we will make some changes to these spaces in the lead up to the Fall 2023 semester.

図書館が学生生活にとって重要であることを理解したうえで、学生の学習や学生サービスのための場所として再構築していくことが述べられています。ただ、物理的な資料の提供はしないともはっきりと述べられています。PhysicalとDigital(Virtual)の間のバランスに関して、どのように共通理解を得ていくかが今後の課題のようです。

なお、この方針を計画するにあたり、大学当局は学生へのアンケート調査も実施し、その結果をもとに策定したとのことです。ただ、メディアの記事によると、学生数5,500人のうち回答者は約1割にあたる500人であったとのことで、学生の意見が反映されていると言えるのかという疑問となり、冒頭で述べた波紋に繋がっているようです。

昨今、日本の公共図書館電子書籍の導入が新聞などでよく取り上げられるようになりました。コロナ禍の外出自粛という背景もあり、図書館を訪れなくても本を借りられるという、デジタル化されたサービスに注目が集まっているのでしょう。私自身、大学図書館に足を運ばずに、データベースや電子ジャーナルなど図書館が提供するサービスで研究に必要な資料を探したり、手に入れたりできてとても助かっています。逆に、電子で入手できないときはとても困ったりもします。大学のような学習や研究を主とする機関では、電子の優位性はますます高まる一方です。そのとき、物理的な特性にどのような価値を見出すのか、(あまりこういう表現は使いたくありませんし証明するのも難しいですが)費用対効果はどうか、それを求める利用者にどう対応していくかなど、あらためて私たちが考えるきっかけを、今回の話題は提供してくれているように思いました。