タスマニア州での運転

2月6日から10日まで、タスマニア州ホバート(Hobart, Tasmania)を訪れました。メルボルンからは飛行機で80分(1時間20分)程度です。メルボルンタスマニア州デボンポート(Devonport)を結ぶフェリーもあるのですが、半日ほど時間がかかること、ホバートとは反対の島の北側に到着し移動に時間がかかることから、今回は飛行機を選びました。

www.spiritoftasmania.com.au

ご存知のとおり、タスマニア州タスマニア島がそのまま一つの州になっています。島の大きさは北海道の約8割ほどです。公共交通機関もあるようなのですが、広大な島内を移動するにはやはり車が便利です。滞在中は、私もホバート国際空港でレンタカーを借りました。

私が利用したのは、YesDriveというカーレンタルで、トヨタカローラハイブリッドが保険などを含め、5日間で530ドルほどでした。空港に到着してからレンタカー会社に電話で連絡し、迎えに来てもらいました。10分から15分ほど待ちました。会社は空港から10分ほどのところにあり、そこで手続きしました。パースで借りたときは、日本と同じように受け渡し前に担当者と車の状態をチェックしましたが、YesDriveではそれが省略されました。その代わりに、担当者が事前に車の写真を撮り、それを利用者と共有するという仕組みになっていました。写真は当日のうちに、メールに添付されて送られてきました。

ホバート近辺で運転していて思ったのは、その制限速度の速さです。メルボルン近郊では、一般道が40km/hから60km/h、ハイウェイが80km/hから100km/hです。ところがホバートでは、一般道でも70km/hから80km/hでした。もちろん、ホバートの中心部で人も車の通りも多いところは40km/hのところもありましたが、郊外に出ると100km/hというところもあります。ハイウェイは110km/hでした。日本で言う片側2車線の国道をみんなが当たり前のように80km/hなどで走るので、少し怖さを覚えました。

また、郊外を走っていてよく目撃するのが動物たちの死がいです。街中ではそうでもありませんが、農地や牧地の間、あるいは街と街を結ぶ道路で、車に轢かれたであろう動物たちの死がいを数え切れないくらい見かけました。動物たちを積極的に保護する一方で、人びとの利便性の犠牲になっている動物たちがいるという事実を知りました。なお、動物を轢いてしまった場合、まだ生きている場合は動物保護センターに連絡する、亡くなっている場合は死がいを道路脇に移動させるのが望ましいそうです。死がいをそのまま放置しておくと、それを狙うタスマニアデビル二次被害に遭うからだと、ツアーガイドの方が教えてくれました。

もう一つ、今回初めて経験したのがガソリンスタンドでの支払いです。多くの日本語ブログなどでも紹介されていますが、メルボルンで給油する場合、①ポンプでセルフ給油、②併設されているお店(コンビニのようなお店)のレジに行き、ポンプ番号を伝えて支払い、という流れです。ところが、レンタカーを返す前に訪れたShellのガソリンスタンドにはお店が併設されておらず、Pay Stationと記された支払機があるのみです。いつもどおり、ガソリンを入れてから支払えばいいのかなと考え、ノズルを給油口に突っ込み、レバーを握るのですが、一向に給油されません。四苦八苦している私を見かねたある男性がやりかたを教えてくれました。①Pay Stationで、ポンプ番号を指定して、クレジットカードとおおよその金額を登録する、②給油する、③必要に応じてPay Stationで領収書を印刷する、でした。「おおよその金額」は、たとえば10ドルと指定すれば10ドル分の燃料が給油されるのだそうです。私は満タンにしたかったので、150ドルと指定し、給油しました。実際は21ドル分ほどで、この金額だけがカードから支払われるのだそうです。たしかに、だれもいないガソリンスタンドで、何の手続きもなく給油できたら、監視カメラでもない限り、給油し放題になってしまいます(監視カメラがあってもチェックするのが大変)。後からよくよく考えれば、まったく合理的ですが、仕組みを知らない私にとっては大きなハードルでした。

タスマニアで楽しみにしていたことの1つに、『魔女の宅急便』のキキが働いていたパン屋さんのモデルになったお店Ross Village Bakeryを訪問することがありました。が、ホバートからだいぶ離れており、時間的な余裕もなかったことから断念しました。次の機会があるかはわかりませんが、訪れてみたい場所の1つでした。

www.rossbakery.com.au

 

National Cultural Policy(国家文化政策)

先月1月30日に、政府からNational Cultural Policyが公表されました。

www.arts.gov.au

Reviveというタイトルを持つこの文書は、今後5年間の文化政策を示したもので、オーストラリアの文化復興を目指し、それに関わる人びと、産業を支援するため、2億8,600万ドルを投資することとしています。

この政策では、目標の実現にあたり、五つの柱を提示しています。

  1.  ファーストネーション優先(First Nations First)
  2.  すべての物語に適切な場所を(A Place for Every Story)
  3.  アーティストの重要性(Centrality of the Artist)
  4.  堅固な文化インフラ(Strong Cultural Infrastructure)
  5.  人びととつなぐ(Engaging the Audience)

1つ目は、ヨーロッパの人びとがオーストラリア大陸に入植する前から、この地で暮らしてきた人びと(First Nations)への敬意を表すとともに、その文化をオーストラリアの芸術や文化の中心に据え、その継続、発展を支援するものです。

2つ目は、分野、地域、世代などを問わず、それぞれの文化・芸術活動に適切な支援を施すことを指しているようです。

3つ目は、文化・芸術活動を行う人びとがそれを生業とできるように労働環境を整備したり、教育を提供したりすることなどです。ハラスメントをはじめとする労働環境問題への対応も含まれます。

4つ目は、文化・芸術活動の拠点となる機関、組織、施設を支援するとともに、デジタル化への対応も盛り込まれています。

最後は、オーストラリアの文化・芸術を振興するためには、それを購入したり、鑑賞したりする人びとの存在が欠かせないことから、人びとにどのように届けるのか、つなげるのかという点に注目を置いています。このとき、オーストラリア国内はもとより、海外に向けた発信も視野に入っています。

www.abc.net.au

私がこの政策に関心を持ったのは、ABC Breakfastで、Netflixなどのストリーミングサービスがその収益の一部をオーストラリアの制作活動に充てることを義務付ける、いわばクオーター制が採用されていると報じられたことからでした。関連記事は次のものです。

www.abc.net.au

メディアのデジタル化が進む今日、またCovid-19パンデミックを経験してから、ストリーミングサービスは、私たちの生活の一部として定着しました。Netflix、Disney+、Amazon Prime Videoなどはさまざまな国のコンテンツを提供しています。結果、自国の産業の発展に影響を及ぼしているとも考えられてきました。そこで、この政策では、ストリーミングサービスを提供する企業が得た収益の一部(20%)を自国のコンテンツ制作に還元することを義務付けることにしたのです。これは産業育成にとどまらず、オーストラリアの文化・芸術を、そしてオーストラリア自体を世界中の人びとに知ってもらうきっかけにもなります。それが巡り巡って、産業のさらなる発展に寄与するという仕組みと言えます。

文化作品にかぎらず、さまざまな商品、サービスは、人びとに知ってもらって初めて、それを購入してもらったり、利用してもらったり、消費してもらえます。人びとにリーチするための多様な方策が必要です。オーストラリアは英語圏の国なので、その点からも世界中の人びとに認知してもらいやすい立ち位置にあります。もちろん、日本のアニメや漫画をはじめとする文化・芸術のように、日本語そのままで消費されるものもありますが、ある場面ではいかにその障壁を低くするかもポイントになるでしょう。具体的な予算化は5月ですが、今後どのように展開されていくか、注視していきたいです。

大規模な文化政策を打ち出した政府ですが、一方で昨年来、大きな話題となった問題はここには含まれていません。すなわち、オーストラリア国立博物館(National Gallery of Australia)とオーストラリア国立図書館(National Library of Australia)への財政支援です。

これら文化組織では、2015年から予算削減が求められ、運営資金の逼迫を訴えてきました。昨年(2022年)12月には、オーストラリア国立図書館は予算削減により同図書館が運営する検索サービスtroveを2023年7月に閉鎖せざるを得ない状況まで来ていると公表しました。troveは同館のOPACとしてだけでなく、デジタルコンテンツを提供する検索エンジンです。日本の国立国会図書館のNDLサーチ(https://iss.ndl.go.jp/)あるいはジャパンサーチ(https://jpsearch.go.jp/)のような位置づけと言えるでしょうか。

その存続問題に対して、ツイッターでは#savetroveというハッシュタグで情報発信、意見交換が行われたりしています。多くの有識者も声を上げています。

オーストラリア政府は、先のNational Cultural Policyには含めなかったものの、5月の予算策定に向けて検討すると述べているようです。

www.abc.net.au

 

振り返って、日本でも同じような報道があったことを知りました。『文藝春秋』2023年2月号に寄稿された東京国立博物館の予算逼迫問題です。

bunshun.jp

これ以外にも、大阪大学が光熱費の高騰のにより図書館の開館時間を短縮することが話題になりました。

news.yahoo.co.jp

ともすれば、こうした組織や機関は、その存在が当たり前過ぎ、かつ(こういう言い方は好きではありませんが)費用対効果を計るのが難しいため、予算削減の対象になりやすいものです。その多くの運営に市民の税金が投じられていることから、その成果をきちんと提示することは大切です。他方、息の長い活動をつうじて社会に貢献していることも事実です。その時どきの記録を保存しているからこそ、過去の情報に立脚した知的活動が行えます。公共図書館をはじめとする施設・組織は、すべての市民に開かれているからこそ、どのような経済状況の人でさえ、そこで情報を得、学び、考えることができます。今朝(2月4日)の朝日新聞の耕論で取り上げられていた「なぜ「図書館の自由」?」にも通じる話であると考えました。

digital.asahi.com

 

Australian Open 23が終わってしまいました

2週間(予選会を含めると3週間)にわたって行われたAustralian Open(全豪オープン)が終わりました。私の気持ちとしては「終わってしまいました」です。

最終日となった昨日は、女子ダブルス決勝と男子シングルス決勝が行われました。女子ダブルスには、日本の青山修子選手、柴原瑛菜選手が登場しました。第1シードのBarbora Krejcikova選手、Katerina Siniakova選手のペアにストレート負けでしたが、初の決勝進出でしたよね。同じく初めて決勝に進出した車いすテニスの小田凱人選手も言っていましたが、こうした経験を積み重ねることが優勝に近づくことになるのでしょう。今後の活躍に注目したいです。

男子シングルスには、ジョコビッチ選手(クロアチア)とチチパス選手(ギリシア)が進みました。ジョコビッチ選手は全豪オープン前に開催されたアデレードオープンでハムストリングを怪我したということが報道されていました。全豪オープンの2回戦以降はテーピングも巻いていたと記憶しています。この短期間で回復することはないと思うのですが、決勝ではそのテーピングもなく、彼の底力を、彼の「テニス」を目の当たりにしました。

もちろんテレビ観戦です。ジョコビッチ選手の出場する試合は、初戦からロッド・レーバー・アリーナの夜の部(Night Session)に設定され、指定席のお値段もそれなりにしたので、あきらめました(苦笑)。しかし、今になって思えば、少し(どころかたくさんなのですが)奮発して、1試合でも見ておけばよかったかしら...。

一方のチチパス選手も、昨年のフレンチオープンで決勝に進んだ、若手の実力者のようですね。準決勝では西岡良仁選手に勝利したハチャノフ選手に3-1で勝ち上がってきました。準決勝当日の27日、二人の試合を観戦した男性(おじさん)に「とってもよい試合だったよ」と声をかけられました。たまたま聴覚障害者部門の試合を観戦していたときに、「これは何の試合?」と尋ねられて、先ほどまで観戦していた試合のことを教えてくれたのでした。

さて、男子シングルスは第1セットこそ6-3でしたが、第2セット、第3セットと伯仲しました。チチパス選手がブレイクすればすぐさまジョコビッチ選手がブレイクバックするなど、一進一退の攻防がつづきました。両セットとも6-6のタイブレイクにまでもつれこみました。ただ、いずれのタイブレイクも、ここぞというときの決定力はジョコビッチ選手が上手でした。この「決定力」はナダル選手の試合でも感じました。その瞬間に自身の実力を最大限に、そしてそれ以上に発揮できるのでしょうね。また、ジョコビッチ選手の持久力の高さも感じられました。第3セットの途中で、ファーストサーブの平均時速が紹介されましたが、チチパス選手は次第に衰えていったのに対し、ジョコビッチ選手は逆に速度が上がっていました。コートでのパフォーマンスも落ちることはありませんでした。全豪オープンの10回目の優勝、ナダル選手に並ぶグランドスラム22度の制覇は、驚くにあたらないと感じられました。

その後のスピーチもすばらしかったですね。世界中の若手、子どもたちに向けたメッセージは、きっと次世代の育成につながるでしょう。あらためてジョコビッチ選手、優勝おめでとうございます! そして、すばらしい試合を魅せてくれたチチパス選手、準優勝おめでとうございました!

ジョコビッチ選手に関してここに記したことは、おそらく観戦したみなさんも感じたことでしょう。今朝のニュース番組ABC Breakfastでも同様のコメントがありましたし、これからさらに勝利数を伸ばしていくだろうと述べていました。

ニュースでは女子シングルス、男子シングルス、そしてオーストラリアのペアが出場した男子ダブルスの決勝に関して報じられました。しかし、女子ダブルスは扱われませんでした。少し残念な気持ちになりました。時間の都合もあるのでしょうが、他の種目も適切に紹介してもらえたらと思いました。

 

Melbourne City FC vs Adelaide United FC

今日はAAMI Parkで行われた、Melbourne City FC と Adelaide United FC とのサッカーの試合を観戦してきました。この日は、先日のメルボルンダービーと同じく、男子チームと女子チームの2試合がつづけて行われました。男子チームは15時キックオフ、女子チームは17時40分キックオフの予定が組まれていました。1月29日現在で、男子は13試合を終えて勝点27で首位、女子は10試合を終えて勝点22の2位です。対戦相手のAdelaideは男子が5位(勝点19)、女子も5位(勝点13)です。

自宅で仕事をしていたら時間に気づかず、男子チームの試合のキックオフに間に合いませんでした(泣)。10分ほど遅れて到着し、試合を観戦。 その直後、12分に今シーズンに加入したThomas Lam選手がヘディングでゴール! これが先制点かと思いきや、私が来る前に、Adelaideが開始直後1分に先制していました(泣)。さらにその後すぐに、ゴール前での味方のバックパスをAdelaideのMF、Ryan Kitto選手にカットされ逆転を許しました。さらに前半終了間際の43分に、コーナーキックから追加点を許し、前半は1-3で折り返しました。

スタジアムの雰囲気もいまいち盛り上がりません。前半を終えただけで敗色濃厚な感じです。そして後半、またもや「事件」が起きました。

後半に入ってすぐの52分に、ワールドカップでオーストラリア代表としてゴールを決めたMatthew Reckie選手がゴールを決めました。2-3。会場は盛り上がってきました。

ゴール直後のサポーターのようす

その直後に交代で投入されたAdelaideのJuande選手が66分にCityの選手にタックルしたところ、あまり聞いたことのない音が会場に響きました。今日はメインスタンドのほぼ正面の前方に座っていて、そのプレイは目の前で起きました。Juande選手にイエローカードが出されたのですが、彼は動けません。選手が慌ただしくスタッフに支援を要請し、処置がつづきます。彼を覆うようにタオルで囲いがつくられます。だいぶ深刻なようです。さらに会場には救急車も到着しました。ここに及んで事態がただごとではないことに気づきます。30分ほどでしょうか。Juande選手は救急車で病院に向かいました。

帰宅後にチェックしたウェブサイトのニュースによれば、彼は右足のすねを骨折したとのことです。選手たちはそのことをその場ですぐに理解したようで、特にチームメイトであるAdelaideの選手の動揺は計り知れなかったでしょう。試合は66分からということで再開され、Cityが後半ロスタイムに得たPKで引き分けで終わりました。

その後、この「事件」(実際は事故)に関して、その背景を1つ知ることができました。選手の安全性の問題です。

オーストラリアでは不測の事態に備え、試合会場に救急車を常駐させる(static amburanlce services)ことになっているようです。しかし、2018年にビクトリア州ではそれを取りやめ、代わりに救急医(emergency physicians)を配置する方針とし、選手会もこれを了承し、現在に至っているとのことです。この措置はビクトリア州のみで、他の州では救急車は現在も常駐しています。今日の試合でも救急医とチームスタッフが対応にあたりました。救急車が会場に到着したのは13分後で、このことが大きな問題としてニュースなどで取り上げられています。

www.foxsports.com.au

サッカー選手の安全性に関しては、横浜F・マリノスでも活躍した松田直樹選手(当時松本山雅FC所属)が練習中に倒れ、亡くなったことを思い出します。その後、AEDの普及が進み、講習会も日常的に行われるようになりました。なにかが起きてからでは遅すぎますが、私たちはそのなにかが起きた今を大切にし、今後の安全性を求めていきたいところです。

さて、男子の試合につづいて行われた女子チームの試合は、Cityが1-0で勝利しました。せっかくのダブルヘッダーだったのですが、観客(サポーター?)の関心は男子チームにあったらしく、会場はがらんとしてしまいました。そのおかげと言っては失礼ですが、好きな席に移動して観戦できました。女子の試合はバックスタンドのほぼ真ん中に移動しました。選手との距離がさらに近く、そのプレイの迫力を間近で感じられました。試合の結果も大切ですが、こうした経験はその場にいるからこそのものであるとあらためて考えました。私個人としては、とてもお得な、充実したサッカー観戦となりました。

女子チームの試合のようす

翻って日本はどうでしょうか。男女両チームを持つサッカークラブも少なくないと思います。きちんと確認していませんが、日本でもこうした取り組みがあってもよいなと感じました。浦和はそうした活動があるでしょうか。どちらも人気チームなので盛り上がらない訳はないと想像します。地元の町田ゼルビアもやってくれないかしら。

 

全豪オープン13日目に行ってきました

今日は女子シングルス決勝の日です。どこかのブログの記事で、決勝戦はイベントやセレモニーもあり華やかなので観戦して損はないと記してあったので、真っ先に取ったのがこの日のロッド・レーバー・アリーナの指定席でした。表彰式をきちんと見たかったので、選手から見て斜め右上後方の席を取りました。お値段約3万円ほど。

今日の予定は次のとおりです。

  • 車いす部門女子シングルス決勝 De Groot選手 - 上地選手
  • 車いすクアード部門決勝 Niels Vink選手 - Sam Schroder選手
  • 車いす部門男子シングルス決勝 Alfie Hewett選手 - 小田選手
  • 女子シングルス決勝 Elena Rybakina選手 - Aryna Sabalenca選手
  • 男子ダブルス決勝 Rinky Hijikata選手、Jason Kubler選手 - Hugo Nys選手、Jan Zielinski選手

車いす部門の上地選手は第2シード、小田選手は第3シードとして決勝に進出しましたが、対するDe Groot選手、Hewett選手は第1シードで格上との試合でした。上地選手は第1セットをDe Groot選手にテニスをさせることなく6-1でとりましたが、第2セット、第3セットは相手にペースを握られ、セットカウント1-2で敗戦となりました。小田選手も自身の良いところは出せましたが、Hewett選手が一枚上手であったように感じました。でも、お二人とも実力を発揮して、しっかり決勝にコマを進めたのはさすがです。くやしさは残りましたが、お二人の今後にとってもよい大会だったのではないかと思います。

車いす部門女子シングルス決勝

車いす部門男子シングルス決勝

また、今回もあらたな発見がありました。車いすのクアード(Quad)クラスです。全豪オープンのスポンサーでもあるダンロップのウェブサイトに次のように説明されていました。

車いすテニスには、「男子」、「女子」、「クァード」の3カテゴリーあります。
「クァード」は、英語で四肢まひを意味する「Quadriplegia」(クァードリプリジア)の略称で、男女混合で試合が行なわれるのが特徴です。
握力がない選手はグリップと手をテーピングで固定することが認められていたり、電動車いすを使ってプレーする選手もいます。
「男子」「女子」のカテゴリーと比べると、車いすを操作するスピードも遅くなります。そのため、球筋を読み、いかに正確なショットでコースをついたボールを相手コートに打てるかどうかが肝となります。

男女混合、テーピングでの固定、電動車いすの利用など、他のクラスとは異なる運用規則です。ただ、こうしたルールの適用は、多様な人びとテニスへの参加の可能性を広げるものであり、好感を持ちました。同様のことは、1月27日にたまたま通りかかって観戦した知的障害者部門(Person with Intellectual Impairmen、PWII)や聴覚障害者部門(Deaf & Hard of Hearing、DHOH)の試合でも感じました。他方、自分の無知に気恥ずかしさも覚えました。この大会をつうじて、さまざまなことを体験し、学びました。

話題は車いす部門に戻ります。数試合をつうじて感じたことの1つは、車いすテニスの難しさ=技術の高さです。車輪が固定されない車いす上で、選手はうまくバランスを取りながらサーブを打っていました。逆に、レシーブの際は、車の勢いを生かして球に力を加えていました。相当の努力に裏打ちされた技術であると思います。これまで、1試合を最初から最後まで観戦したことがありませんでしたが、とても奥深い競技であると感じました。

その後、ロッド・レーバー・アリーナに移りました。準々決勝で、第1シードのSwiantek選手に2-0でストレート勝ちした、前回ウィンブルドン優勝のRybakina選手と第5シードとして順当に勝ち上がってきたSabalenca選手との決勝でした。試合は、Sabalenca選手が3-1で勝利し、四大大会初優勝を成し遂げました。

第1セットはRybakina選手が6-4でとります。Sabalenca選手の強烈なサーブに目を瞠るものがありましたが、Rybakina選手の正確かつ質の高いストロークにSabalenca選手はうまく対応できていなかったように思います。第2セット以降は、技術ももちろんですが、力強い球を次々と決めるSabalenca選手に、Rybakina選手が逆に手を焼くようになりました。第1セットを見たかぎりでは、Rybakina選手が有利かなと思っていましたが、勢いそのままにSabalenca選手が勝利しました。最後のポイントが決まったあとに仰向けに倒れ込んで涙を流していたSabalenca選手の姿、それを大きな拍手で祝福する会場の雰囲気がとても印象に残っています。試合時間約2時間30分、とても見ごたえのある決勝戦でした。

女子シングルス決勝表彰式

表彰式ののち、男子ダブルスの決勝が行われました。このときすでに23時近かったかと思います。決勝に進出したHijikata選手、Kubler選手は地元オーストラリアのペアです。きっと多くの人が応援するだろうと思っていたら、観客のお目当ては女子シングルスの決勝であったのか、空席が目立ちました。係員に席は指定席かと尋ねたところ「そうだ」という返事。ただ、周りにたくさん空いていたので、別のところに移って観戦しました。

男子ダブルス決勝

試合は、地元ファンの期待どおり、Hijikata・Kublerペアが2-0で勝利しました。観客からは「Good job, boys」とか「Good, boys」などと声援を受けていました。Hijikata選手は21歳と若いのですが、Kubler選手は28歳です。(失礼な言い方ですが)見た目はお二人とも若く見えるので、そのように応援されていたのでしょうね。第2セットはタイブレイクから7-4で取るなど、接戦をものにしてのグランドスラム制覇でした。会場は大いに盛り上がりました。

とは言え、帰宅したのは深夜1時過ぎ。大きな満足感とともに、疲労感も半端のなかった全豪オープンでした。

 

全豪オープン12日目に行ってきました

全豪オープンも残すところあと3日となりました。ここまで勝ち進んできた上位の選手同士の対戦が楽しみとなりました。他方、毎日、あれだけ多くの試合があったのが、Match Scheduleを見ると、寂しさも覚えます。

残念ながら本戦出場は叶わなかった日比野菜緒選手は、instagramで次のように話しています。

いつもテニスの試合を観ていると、テニスって負け方を競うスポーツなのかもしれないなと思うことがあります。
トーナメントで、栄光を勝ち取ることができるのはたった一人。
それ以外の選手は必然的に全員敗者になるからです。

優勝者以外は必ず負けるスポーツだからこそ、いかに負けるかが大切になるのではないかと感じました。

いい負けは自分を成長させてくれる!
欲、プライド、過信などを捨てて、一生懸命にプレーすることで次に繋がる何かを得られると信じています。

毎週違う国で行われる大会に出て、試合をして、毎試合ベストの状態で臨むことは簡単ではないけれど、最後の一人になれない時はせめて「グッドルーザー」でいたいなと思います。

大会の進行に従って醸し出される寂しさの背景と、そこに見出されるテニス大会の本質、選手の矜持を知るきっかけをもらいました。ありがとうございます。

さて、今日のスケジュールは、次のとおりでした。

  • 第2試合 ジュニア部門女子シングルス準決勝 石井さやか選手 - Alina Korneeva選手
  • 第4試合 ジュニア部門女子ダブルス決勝 Renata Jamrichova選手、Federica Urgesi選手 - 木下選手、齋藤選手

このほか、第1試合に上地結衣選手の車いす部門女子ダブルス決勝、第2試合に青山修子選手、柴原恵那選手が米国のGauff選手、Pegula選手と対戦する女子ダブルス準決勝も予定されていましたが、仕事の都合と試合が重なってしまったこともあり、ここまで応援してきたジュニア選手の試合に足を運びました。

石井選手は第1セットをとったのですが、第2セット、第3セットとストロークに苦しみ、残念ながらここで敗退となりました。前日のダブルスのときに気にしていた足の状態も思わしくなかったのでしょうか。ラリーでのストロークは力強さを感じ、決して引けをとりませんでした。一方で、抑えが効かず、アウトになるボールもあり、自身も納得していないようすでした。あと一歩でしたね。

ジュニア部門女子シングルス準決勝

ジュニア部門男子ダブルス決勝を挟み、第4試合は昨日石井・小池ペアに勝ったJamrichova選手、Urgesi選手と木下選手、齋藤選手との決勝戦です。相手ペアはノーシードからの決勝進出です。

ジュニア部門女子ダブルス決勝前の練習のようす

第1セット第1ゲームで、木下・齋藤ペアがブレイクし、幸先良いスタートを切りましたが、直後の第2ゲームでJamrichova・Urgesiペアがブレイクバックします。その後さらにお互いにブレイクしあい、訪れた第11ゲームで木下・齋藤ペアが再びブレイクし、次のサービスゲームをキープすれば第1セットをとれるところまで来ました。が、再度ブレイクバックされ、タイブレイクへ。一時期1-4まで話されたところを5-4まで押し返し、あと2ポイントまで行ったのですが、続けてポイントをとられ、7-5で第1セットを落としました。

第2セットは、準決勝までの勢いそのままに6-1で取り返しました。

スーパータイブレイクとなった決勝戦。お互いに一歩も譲らない試合となりました。18本のラリーを数えたゲームも制しました。が、7-10で勝利に届きませんでした。

その後行われた表彰式で、木下選手はインタビューの際、声を詰まらせる場面がありました。写真撮影のとき、齋藤選手はくやしさを浮かべながらも笑顔を見せてくれました。お二人のくやしい気持ちはいかばかりであったろうと思います。ここまでの戦いは決して順調ではありませんでしたが、苦しい試合を乗り越えて決勝まで進み、すばらしい決勝戦であったと思います。ここからのさらなる飛躍が期待できると確信しました。次にどこでお二人の試合を観戦できるかはわかりませんが、これからもひきつづき注目していきます。お疲れ様でした! そして、すばらしい活躍を魅せてくれてどうもありがとうございました!

 

全豪オープン11日目に行ってきました

1月26日は、オーストラリアデー(Australia Day)で祝日です。この祝日は、オーストラリアにとって議論のある日のため、あらためて別の記事として取り上げます。

前回22日(日)以降、車いす部門も始まり、ジュニア部門の選手たちも勝ち進んでいました。そこで、今日の予定は、

  • 第1試合 車いす部門男子シングルス 小田凱人選手 - Gustavo Fernandez選手
  • 第2試合 車いす部門女子シングルス Diede De Groot選手 - 田中愛美選手
  • 第3試合 ジュニア部門女子ダブルス Roisin Gilheany選手、Stefani Webb選手 - 木下選手、齋藤選手
  • 第4試合 ジュニア部門女子ダブルス Rebecca Munk Mortensen選手、Kristina Sidorova選手 - 石井さやか選手、小池愛菜選手

を計画しました。

第1試合、第3シードの小田選手は、第2シードのFernandez選手との準決勝でした。第1セットを危なげなく先取しましたが、第2セットは奪い返されました。さすがにランクが上位の選手です。しかし、第3セットまで気合の入ったすばらしいプレイを続けた小田選手が7-5で接戦を制し、見事、決勝に進出しました。

第2試合も同じく準決勝です。田中選手の相手は世界ランク1位、第1シードのDe Groot選手です。残念ながら、0-6、0-6のストレート負けでした。田中選手は相手の嫌なところをつこうとするのですが、それを上回る技術とパワーで圧倒されたというのが正直なところでしょうか。

第3試合は、日曜日の初戦を応援したペアの準々決勝で、最も楽しみにしていた試合です。私は見られませんでしたが、2回戦をストレート勝ちしコマを進めていました。相手は、齋藤選手がシングルス初戦で対戦したWebb選手がいます。第1セット第1ゲームをいきなりブレイクされると、第3ゲームもブレイクされました。第4ゲームをブレイクバックするも、次の第5ゲームをブレイクバックされるなど、なかなか波にのることができないようすでした。第1セットは2-6で落としましたが、第2セットは違いました。相手の第2ゲームをブレイクすると、自分たちのゲームはしっかりキープし、第8ゲームも再びブレイクして、6-2で取り返します。つづく第3セットのスーパータイブレイクでもこのままの勢いでと思ったのですが、一進一退でした。一時、9-5まで行き、あと1ポイントというところで足踏みし、9-8まで追い上げられます。しかし最後は自分たちのゲームをキープして、10-8で準決勝に進みました。齋藤選手のストロークも力強く、木下選手の技術もすばらしく、勝手なことを言いますが、一試合ごとに成長しているのだろうなという感想を持ちました。

つづく第4試合は、同じくジュニアの部女子ダブルスの準々決勝です。第1セットは1ゲームをブレイクされましたが、冷静に対応して6-4で取りました。このまま行けるかなと思いましたが、たびたびミスが出てしまい、4-6で第2セットを落としてしまいます。石井選手はこの試合の前に、シングルス3回戦を戦った後でしたので、疲れがあったのかもしれません。途中、メディカルタイムアウトをとり、左足太ももにテーピングをしてもらっていました。万全ではないのですね。それでも第3セットのスーパータイブレイクは、序盤こそ相手ペアのペースでしたが、10-7で制しました。

とここまでで、さらに会場に足を運ばなければならない理由ができてしまいました(苦笑)。ところが、公式ホームページで試合スケジュールを確認すると、なんと、ジュニア部門の女子ダブルスの準決勝が設定されているではありませんか。そこで、予定の追加です。

  • 第5試合 ジュニア部門女子ダブルス 木下選手、齋藤選手 - Mirra Andreeva選手、Alina Korneeva選手
  • 第6試合 ジュニア部門女子ダブルス Renata Jamrichova選手、Fedelica Urgesi選手 - 石井選手、小池選手

今ひとつ、時間を覚えていないのですが、第5試合は19時前後からであったと思います。相手ペアは、第2シードに指定されていましたが、前の試合の勢いがつづいたのでしょうか、第1セットを6-3で取ります。第2セットはお互いにブレイクしたり、ブレイクバックしたりと接戦となりましたが、木下・齋藤ペアが第11ゲームを再びブレイクして、次の第12ゲームをキープ、7-5で決勝にコマを進めました。データを確認すると、第2セットで10回以上のラリーがつづいたゲームが10回ありました。最長は17回が二度でした。もちろん、相手にとられたポイントもありましたが、木下・齋藤ペアの粘りが光りました。試合後に少しだけお会いでき、翌日の決勝へのエールを送りました。

引き続き、同じコートで、石井・小池ペアの試合が行われました。第1セット、相手のサービスである第2ゲームをブレイクして幸先のよいスタートだったのですが、徐々に相手の勢いのあるボールが決まり出します。6-6のタイブレイクにもつれこんだ第1セットは、惜しくも5-7で落としてしまいます。第2セットも、第8ゲームまでにお互いに二度、ブレイクとブレイクバックを繰り返したのですが、4-6でゲームセットとなりました。お二人が決勝に進めば日本のチーム同士の試合になったので、それも楽しみでしたが、残念です。気になるのは、石井選手の足の具合です。翌日にシングルスの準々決勝が控えています。気持ちを切り替えて、体調を整えて臨んでもらいたいです。

ジュニア部門女子ダブルス準決勝 石井・小池ペアの試合のようす

6試合に及ぶ観戦が終わって帰宅したのは、23時を回っていました。記事は「今日」と書いていますが、そのつもりになって30日に書きました。